(written in 2024/07/19)

〜イントロダクション3〜
採卵用の鶏は家禽として品種改良されてきた結果、毎日のように卵を産むようになった。

その弊害として、本来の寿命は7年前後とされるところ、採卵用鶏の多くは2年程度で死んでしまう。毎日の産卵という身体の酷使によって、産卵に関わる臓器の不具合によって死に至ることも少なくない。

日々、6g以上のタンパク質を含み、外殻にカルシウムなどのミネラルを必要とする卵を産み続けるために異様なほどの食欲も身に着けている。このため、欲するままに餌を与えた場合、寿命は短くなってしまうが、餌を制限することで、本来の寿命以上に生かすことができるので、餌を与えないかどうかが手段ではなくペットとして鶏を飼っている人達の悩みどころとなる。

鶏の中でも、白色レグホンという品種はスーパーに並ぶ白い卵を産む鶏で、異常に生産性が高い。反面、養鶏場では1〜2年で廃棄されている。

私が飼っている鶏の中にも家禽として洗練された白色レグホンの血が濃い個体がいる。毎日のように卵を産むため、2歳前にして卵は歪なアシンメトリーで殻も薄く、羽毛はボロボロというお婆さん化が著しく、半年後には死んでしまうと予想された。

完全家禽化されていない野性味が残っている品種や先祖返りを起こした個体は、卵を温める習性によって、抱卵中は卵を生成しない絶食状態となり、それによって毛の生え換わりや寿命の延長が起こるが、この現象を人工的に起こす方法がある。

それが14〜30日間の絶食だ。

IMG_7761ボロボロになった鶏を絶食させると、羽毛が生え換わるだけでなく、卵の質と産卵率が再び向上するという。産卵率が低下した個体や売り物にならない卵を産むようになった個体は大規模養鶏場ではどんどん廃棄するしかないが、絶食による鶏の再生は小規模な自然養鶏においては、メジャーなテクニックであり、これを強制換羽という。

このままその子が死んでしまうのも忍びないので、試しに空いていたヒヨコ小屋で隔離して、絶食させてみることにした。



〜結果〜
2週間ほど経過すると、驚くべきことに、抜けたまま生えてこなかった部位の羽毛が生えてきたのだ。

IMG_7763羽毛は当然ながら、タンパク質でできており、その形成には多量の栄養素とエネルギーが必要なはずだが、何も食べていないのに、新規の細胞群が再生される様は正に生命の神秘と言っても良い。無から有は産み出せないので、この羽毛は古くなった細胞がオートファジーによって分解され、アミノ酸のリサイクルによって再生された訳だ。

この状態になれば断食を中止して、再度給餌を開始する。

すると、ツヤツヤの羽毛になった代わりに、ガリガリに痩せ細った鶏は2週間後には卵を再び産み始めるが、ここで二度目の驚きがある。

歪で殻の薄かった卵が左右対称のシンメトリーになるばかりか、若い鶏の卵のごとく、殻も分厚くなったのだ。

これは単なるオートファジー全開による猛烈なアミノ酸リサイクルだけでは説明が付かない。



〜臓器の若返り〜
強制換羽による産卵改善の一因は、解剖によって生殖器の異常な肥大が正常化されることが確認されているが、実は卵を生成する生殖器という臓器自体が若返っていることが証明されている。

卵はほとんどがタンパク質でできているが、その生成過程における生殖器からのタンパク質分泌機能(タンパク質分泌細胞)が若返るのだ。このため、アシンメトリーかつ薄い卵殻であった形質が若鶏の卵と同等にシンメトリーかつ強固になる訳だ。

この現象から判ることは、一発逆転的な若返り方は存在し、それは細胞分裂のために栄養を沢山取り込むという何となしに思っていた従来の考え方とは真逆で、一時的ではあるが一切の栄養を長期間断つことであり、オートファジーとアミノ酸リサイクルを極大化することである。

もちろん、ミクロな現象ではあるが巨視的大まかな物理的にはそうであり、更に細かく見ればサーチュイン遺伝子はもちろん、その個体を生きながえらせる為の様々な眠れる遺伝子のスイッチがオンになる正のエビジェネティクスが起こったに他ならない。



〜感想〜
10日強かつ厳しめのファスティングを持ってして、初めて若返りを実感できたのは上の現象で説明が付くかも知れない。

アグリビジネスの台頭、支配、西洋医学による刷り込みによって、私達は病気や体調不良になったら、沢山食べなければならないと思い込んでいるが、絶えず飢餓と闘い生き残ってきた子孫である我々の身体、遺伝子には飢餓状態によって再生や機能回復が起こる仕掛けが搭載されているのだろう。

15〜18時間断食でも若返りを実感できる人もいるかも知れないが、脳のニューロンや各臓器の再活性には3日以上の断食が必要であることからも、確実な結果を得たい場合、刷り込まれた習慣からはクレイジーと思われるような10日間以上の長期間絶食が有効であると考えられる。

個人的には一切何も食べていないのに、鶏の羽毛が生え換わったとことが何より衝撃的で、「だったら!俺の毛も生えてきてもいいんじゃね?」と、再び長期間・・・自己最高記録のファスティングに挑戦してみたくなった次第である。



【Ex】
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