素養を知るなら母を観よ-24
「フィットネス関連遺伝子の多型」-5

〜遺伝子検査による筋トレ指標と栄養摂取指針の難しさ1〜
「血液型占いレベルになっていないか?」-前編


ADRB2遺伝子は脂肪分解や筋肉のつきやすさに関与し、ADRB2遺伝子に変異を持つ人は、痩せ型で筋肉が付きにくい傾向があるとされる。

ADRB2遺伝子変異タイプは、代謝が高く、タンパク質代謝も激しい為、筋量の維持が難しいと考えることができるからだ。

ここを額面通りに受け取って一方通行的な思考で対策を講じると、一見、科学的で理に適っているようで、その実、ほとんど効果のないものとなってしまう。

つまり、

「ADRB2遺伝子変異タイプはタンパク質のエネルギー化が激しいので、普通の人より多くのタンパク質を摂りましょう

となる。

これに関して正しいか正しくないかを問えば、正しいと言えるのだが、効果があるかないかで考えると違ってくることは、恐らく皆さんも予想できるはずである。



タンパク質のエネルギー化が激しい場合、量を摂るという手段は間違いではないが、そもそも典型的なADRB2遺伝子変異タイプのバナナ型体型を発現している人は総じて胃腸が強くないため、大多数の人にとって大量のタンパク質を摂る方法は適さない。

そして、そもそも、アクセルベタ踏みでタンパク質を燃やしているエンジンに更にタンパク質をくべる前に行うことがある。

それは筋分解をシャットダウンし、筋合成を活性化することで、筋組織での血中アミノ酸利用を高める・・・筋線維へのアミノ酸同化を促進するように仕向けることが先決であることに気がつくことだ。タンパク質のエネルギー化を緩和し、筋肉でタンパク質が利用されるようにしないといけない。

そのためのテクニックに関しては皆さんも御存知の通り、ロイシンやHMBの積極的利用である。



食事やタンパク質摂取の際に、ロイシンやHMBを利用することで、血中へ到達したアミノ酸が無駄に燃焼されるのを防ぎ、筋肉へと取り込まれやすくすることができる。

上の条件を満たした上でタンパク質摂取量向上に意識を向けるべきだが、その際に、胃腸が弱く摂取したタンパク質の血中到達率が悪い人などは、アミノ酸やペプチド製品などを利用するのが更に良いだろう。

このあたりの更に詳しいメカニズムに関しては、

〜β2ADR遺伝子変異タイプにも効果覿面〜

をご参照頂きたい。

というわけで、ADRB2遺伝子変異型の人が筋肉をつけようとする際には、多方向からの考察とアプローチが必要となる。

「ADRB2遺伝子変異型の人はプロテインなどを利用してタンパク質をいっぱい摂りましょう✌」というアドバイスは、血液型占いレベルになってしまうのだ。

(2021年11月10日記)

#32へ続く



Ex:
ACE遺伝子I/I型の筋肥大アプローチ考察

β3ADR遺伝子変異タイプの内臓脂肪対策

負荷強度に依存しないトレーニング処方の多様化

【関連】
己を知れ #序
己を知れ #1
己を知れ #2
己を知れ #3
己を知れ #4
己を知れ #5
己を知れ #6
己を知れ #7
己を知れ #8「素養を知るなら母を観よ?-1」
己を知れ #9「素養を知るなら母を観よ?-2」
己を知れ #10「素養を知るなら母を観よ?-3」
己を知れ #11「素養を知るなら母を観よ?-4」
己を知れ #12「素養を知るなら母を観よ?-5」
己を知れ #13「素養を知るなら母を観よ?-6」
己を知れ #14「素養を知るなら母を観よ?-7」
己を知れ #15「素養を知るなら母を観よ?-8」
己を知れ #16「素養を知るなら母を観よ?-9」
己を知れ #17「素養を知るなら母を観よ?-10」
己を知れ #18「素養を知るなら母を観よ?-11」
己を知れ #19「素養を知るなら母を観よ?-12」
己を知れ #20「素養を知るなら母を観よ?-13」
己を知れ #21「素養を知るなら母を観よ?-14」
己を知れ #22「素養を知るなら母を観よ?-15」
己を知れ #23「素養を知るなら母を観よ?-16」
己を知れ #24「素養を知るなら母を観よ?-17」
己を知れ #25「素養を知るなら母を観よ?-18」
己を知れ #26「素養を知るなら母を観よ?-19」
己を知れ #27「素養を知るなら母を観よ?-20」
己を知れ #28「素養を知るなら母を観よ?-21」
己を知れ #29「素養を知るなら母を観よ?-22」
己を知れ #30「素養を知るなら母を観よ?-23」
己を知れ #31「素養を知るなら母を観よ?-24」
己を知れ #32「素養を知るなら母を観よ?-25」

プロトタイプ「己を知れ」