〜エピローグ〜

そもそも、私が陸上短距離を始めた切っ掛けは、小学校の運動会の地区対抗リレーに頼まれて出場した際、予選通過後に「決勝で中学生に代われ」という地区役員の圧力に負けて交代してしまった判断ミスと悔しさから、そして、決勝で父が走ると思っていた娘が傷ついてしまったかも知れないということ、自分の娘をはじめとする子供達に、親が身体を張って気張っている姿を見せる機会を失ってしまったこと・・・。

もう一度、お父ちゃんが身を削って走る姿を見せたい!
そのためには、公式の試合に出るしかないと判断したためだ。

今ではそれが立派な趣味になり、減量に対する明確な納期が定まることで、年間を通してリーンなコンディションを保つことができ、尚且つ運動習慣を維持することができていることから、今でも思い出す度に当時と同じ温度で腸が煮えくりかえるが、その切っ掛けには多少感謝しているかといえばそうでもなく、それを昇華できた自分に感心している(←え!?自分話?)。

2018年、3年振りに運動会の地区対抗リレーへ出場したが、中学生となった娘は放送席に座っていた。そして、偶然ではあったが、地区対抗リレーの実況を担当することになった。

当たり前ではあるが、ほぼレギュラーと化している他の地区のお父さんは腕自慢(足)であっても常時鍛えている訳ではなく、お父さんの代わりに出場する学生達や若者達も現役の短距離走者ではない為、私は大人気ないほどのブッチギリの速さで快走することができた。

その父の姿を娘が実況放送するという最初に掲げたの目的以上の結果を得るに至った。小学生となった息子も誇らしげであった。娘も驚いていた。



後日、駅までの道を歩きで向かっていると、向かいからやってきた自動車が私の横で停車した。結構な頻度とスピードで自動車の往来がある道なのに、停車するなんて何事か?

そう思っていると、ウインドウが降りるや同じ地区のおば様が顔を出して、「こないだのリレー、速かったよ!」と。いやいや、後ろ、詰まってるやん。

また、別の日。私の公園トレーニングに息子が付いてきた。私は自分のトレーニングに必死なので、子供達には運動を勧めず、ただ、遊んでいれば良いくらいの感覚である。

私はトレーニングを終えたので、そろそろ帰ろうかと思っていたところ、そこを通りかかった同じ地区のおじ様が息子に私のことを褒めちぎると、「僕、今からちょっと走りの練習する」と情動が息子の身体を動かしたことが2度もあった。

このようなことがあり、私としては復讐劇ともいえるリレーへの出場は大団円を迎え、地区対抗リレーに関しては今後は出場しなくても良いと言う気持ちになった。

が、とことがである。



〜準備万端の男〜

運動会当日、リレーの予選前には早めの招集がかかるが、その前に充分なウォーミングアップを施しておきたかった。右ふくらはぎを痛めていることもあるが、そもそも、準備運動なしで走ったら、その他の部位も怪我をしてしまう可能性が高く、もちろん、よいパフォーマンスを披露したかったからだ。

しかし、入念かつ熱心に準備運動に取り組んでいる姿を人に見られたくない。あいつ、えらい気合い入ってんじゃねぇかと思われたくないのである(いや、実際、張り切ってるヤン)。

そこで、招集前に学校を抜け出し、近隣の公園へ向かうと、前方から額が汗ばみ、頭からは湯気があがっているような二十歳くらいの青年が走ってきた。既に私からは臨戦態勢の陽炎が立ち上がっていたが、蒸気の如く噴き出るオーラから、出場者である事が一目で判った。

こんなところで、隠れてウォーミングアップするなんて・・・俺と同じ、・・・「こっち側の人間」だ。何走者目か尋ねてからんでみようかと思ったが、同じ第一走者で負けてしまったら恥ずかしいと思ったので、黙々とウォームアップを続けた。

件の彼は地元出身の若き消防士で、この日、運動会の為に遠方より呼ばれたらしく、他の地区のアンカーを努めていた。

で、圧倒的に速かった!そこには嫉妬なぞ、存在せず、感嘆と尊敬の念だけが芽生えた。

ピッチ、動作の速さが私とは比べものにならず、接地時のインパクトも全く異なっており、私よりも速いのは明かであった。

当日の感想では元陸上部で(あろう)現在もトレーニングを続けている(であろう)彼に勝てるイメージはなかったのだが、時間が経つにつれ、あのような走りに近づけるにはどのような練習をすべきかなどと考えるようになり、あの鼻っ柱(㊟)をなんとかへし折れないだろうかなどと図々しい考えが頭を過ぎるようになった。㊟ 実際は全然、いきっていない好青年

陸上短距離への取り組みはリーンボディ維持目的が強くなってきたが、上のような陳腐な野心によって、再び速くなりたいという練習意欲を得ることができ、もしも、呼ばれることがあれば、「これまでと違った心意気」で運動会のリレーに出場できる気がした。

ていうか、勝手にライバル認定した相手と大勢の知り合いの前で対決したいという話。

Second Seasonへ続く



【Ex】
30代後半からの筋肉増強-序
30代後半からの筋肉増強-本編

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