番外編「上荘のコウ・カルナギ」

駅まで自転車で通っている。

私には昔から変なこだわりがあり、どんな坂道も立ち漕ぎしないというルールを高校時代から頑なに守っている。故にそれなりの自転車道的脚力を維持している(と自分では思っている)為、後ろから自転車に抜かれた記憶がない。

ところが、ある日、駅までの自転車を漕いでいたところ、後ろから自転車の接近音が聞こえて来るではないか?汗をかくのが嫌なので、確かに全力で漕いではいないが、それでも普通の人が追いつけるはずはない。血気盛んな高校生が私に挑んで来たのか?

そう思案している内に、後ろの自転車は私を抜き去って言った。



しかも、私より年上であろう女性であった。更に驚くべきは、(恐らく)変速器なしのシティサイクル、いわゆるママチャリであったことだ(※)。

※ 白バイ以外に後ろへ注意を払う必要のない走り慣れた山道や峠で、アルトワークスではないドノーマルのアルトに抜かれた感じ

一度目の邂逅は私の体調が悪かったのかも知れないとか、女性にしてはかなり脚力がある人が全力中の全力で漕いでいたからとか考えていたが、二度三度遭遇する内に次元の違う人間の存在を認めるようになった。機動戦士ガンダム戦記のエリク・ブランケの台詞「あんな奴・・・、いるのか・・・!!!?」である。

その時から、彼女のあだ名は「上荘のコウ・カルナギ」となった。漫画アームズの無改造、無ドーピングなのにサイボーグや他の兵器人間よりも強い、「生まれながらして全身のチャクラが開いている」といわれた超人である。



で、ある時、駅までワイフに自動車で送ってもらっている時に、その話をしたところ、丁度、その人が自転車で駅まで漕いでいるのに出くわした。

あっ!あの人は確か、中学の2こ上の先輩で、中学時代に体育館の端から端まで補助なしの逆立ちで軽々と往復していたのを見たことある・・・と。やはり、ただ者ではなかった。

後日、またも自動車で送ってもらっている時に、「自転車の場合、この時間にここだと、全力で漕いで間に合うか間に合わないかなんだよな〜」と話していたら、その人が自転車で現れたが、予想を裏切らず、電車に間に合っていた。



てな感じで、私何ぞはトレーニングと贅沢な栄養摂取によって現在の身体能力を保っているが、極々希に漫画版の封神演義に出てきた天然導師のような人っているよね〜って話。



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