筋肉増強を達成する
実践編1


筋成長を刺激する100点に近しいトレーニングができたとしても、血中のアミノ酸が筋肉へと同化されて、筋肥大へと導かれるまでには、様々な要因の影響を受ける。

理想的なトレーニングを課すことができ、理想的な食事を摂るでき、充分な休息が出来たとしても、筋肥大のスピードには個人差が存在し、そのメカニズムも個人個人異なる。



〜現代的視点〜
ACTN3遺伝子
速筋線維と遅筋線維の比率。
R/R型は速筋線維が多く、X/X型は遅筋線維が多い。

ACE遺伝子
血管拡張、酸素供給量に関わる遺伝子。
中間型のI/Dタイプは他のタイプに比べて、トレーニングによる筋力の伸びが高い。

β2-AR遺伝子(ADRB2遺伝子)
別名「浪費型遺伝子」。基礎代謝が正常型に比べて170kcal高く、タンパク質の同化が不利。

遺伝的に筋肉が付きやすいか否かと一口に言っても、広く一般的に認識されだしただけでも、上の3つの遺伝子が関連している。それぞれは別個のものなので、単に付きにくいとして対処対応するのではなく、個々の遺伝タイプ毎の攻略を見つけてテクニカルに実践し続ける価値がある。

その際に重要となる要因、というよりも、「遺伝子タイプ別よりも重要な因子」を以下に羅列したい。



〜ホルモン分泌的視点〜
テストステロン
筋肉におけるタンパク質合成を司る遺伝子に直接働きかけて、筋肉増強を促す。主に睾丸、サブで副腎で生成される。

DHEA
年齢と共に分泌量が低下するテストステロンなどの性ホルモン前駆物質。DEHA自体にも穏やかな同化作用がある。副腎で生成される。

成長ホルモン
年齢と共に分泌量が低下するが、多くの人はハードな運動によって、その分泌を高めることが出来る。成長ホルモンによる筋肥大は主に成長ホルモンによって分泌が促される同化ホルモン「IGF-1」による間接的な現象と考えられている。

インシュリン
タンパク質のみならず糖質の摂り込みの役目を担う同化ホルモン。インシュリン分泌能力や感受性には個人差が大きいが、運動や特殊な栄養素によって筋肉における感受性を強化できる。

甲状腺ホルモン
代謝を司るホルモン。レベルが高すぎると、安静時代謝が著しく高まり、筋肉が付きにくい。レベルが低すぎると、非常に太りやすく痩せにくい。

コルチゾール
ストレスによって分泌される異化ホルモン。ストレスフルな環境では、筋肉が分解されて筋肥大しにくい上、腹部に脂肪が付きやすくなる。



〜包括的視点〜
消化吸収能力
タンパク質に代表される通り、巨大な分子の塊を腸で摂り込むことができる最小単位まで分解するには、高い消化能力が必要。

腸内細菌叢バランス
腸内細菌のバランスが良好であれば、三大栄養素のみならず、ポリフェノールやカロチノイドの色素の吸収率も高まる。バランスの悪い細菌叢は重要栄養素の摂り込み率低下や炭水化物への異様な渇望と言った悪循環を生み出す。



筋肉増強に関わる要因を簡単に挙げてみたが、たかだか数個の遺伝子を並べて論じることが無意味である事が想像できるだろう。

「遺伝子がー」、「速筋の比率がー」と言ったところで、胃腸が弱かったら、そんなのは二の次となるので、胃腸が弱いのであれば優先順位は摂取栄養素の消化吸収率を高めるテクニックや消化酵素の利用となる訳だ。

生まれつき速筋線維が多い、あるいは高いテストステロン生成能力を持っていても、ストレスフルな環境に毎日長時間さらされていては、コルチゾールによる筋分解が更新するだけでなく、テストステロン生成にストップがかかってしまう為、筋量どころかQOLまで低下しまうのは、体感的にも広く知られた現象である。

ということで、次回は上に挙げた個々の因子に働きかけるギミックが仕込まれたテクニカルなサプリメントを紹介したい。

実践編2へ続く



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