〜乳酸の発生〜
(個人差は大きいが)安定した軽度の運動では酸素を用いた代謝によってATPが賄われる。筋中のグリコーゲン(並びに血中グルコース)と体脂肪を50:50近辺でバランス良く分解し、少ない分子から効率よく多くのATPを生成することができる。

この状態においては乳酸が発生しない為、また、無尽蔵と言っても良い体脂肪をエネルギー源とする為、長時間運動を継続することができる。

長時間運動を持続できるかできないかのターニングポイントとなるのが、運動時の出力である。運動強度が高まる・・・例えば走るペースを上げると、その運動を成立させるためのATPが有酸素由来での生成のみでは足らなくなり、酸素を用いない嫌気性代謝、すなわち、無酸素性代謝によるATP生成が行われる。

動作を完遂する為の必要ATPが有酸素生成を超えると、グリコーゲン、グルコースからのATP転換が起こり、その代謝過程において乳酸が発生するが、そのATへの切り替わりポイントは個人差があり、特に長期の訓練の影響を受ける。



〜乳酸の影響〜
「全力活動限界時間は1分!」

乳酸は酸性の性質を持つ為、これが大量に発生すると、体内環境(筋内環境)は途端に酸性へと傾く。

我々の体内は普段pH7.4の弱アルカリに保たれており、各種の代謝酵素はその環境下で効率よく働けるように設計されている。

酸素を用いたグリコーゲン(グルコース)代謝はエネルギー発生効率が非常に良く、グルコース1分子から38分子のATPを生成する。一方、無酸素系代謝においては、1分子のグルコースから2分子のATPしか生成できない上、2分子の乳酸を発生させる。

ただし、無酸素による解糖系のATP生成は反応速度が速い為、鍛錬者においては限定された一定の時間内で有酸素代謝を大きく上回るATP生成を行うことができる。

解糖系は瞬間的に大容量のATPを賄うことができるが、変換効率の悪さから、解糖系が全開すると大量の乳酸を発生させる。この時、身体(筋肉)は一気に酸性へと傾くため、代謝酵素の活性にストップがかかってしまう。

エネルギー発生の代謝にストップがかかり、エネルギー生成は大きく鈍り、筋収縮も鈍化、神経伝達の低下が起こる。

大規模なATP生成、すなわち、全力疾走などは爆発的に筋内の乳酸を増やす為、充分なトレーニングを積んだ鍛錬者であっても、その全力活動限界時間は1分程度とされている。

#3へ続く



【唐突な用語解説】
無酸素閾値と無酸素運動の限界-1「無酸素性作業閾値
無酸素閾値と無酸素運動の限界-2「全力活動限界時間は1分!
無酸素閾値と無酸素運動の限界-3「無酸素運動は大量に酸素を消費する!

BDNF