レジスタンステストで速筋体質かどうか判別できる?-余談編

Q:最大挙上重量の80%であれば、普通は10回程度は反復できるというのが定説ですが、私の場合、6回前後しか反復することができません。しかも、2セット目になると、もっと反復回数が落ち込みます。持久性から考えると、速筋線維が多いタイプと判断しても良いでしょうか?

アデジオテンシン変換酵素(ACE)を作る遺伝子には、II型とID型、DD型があり、II型の人は驚くべき持久力を持つ為、速筋体質や遅筋体質に関わらず、II型であればトレーニング耐性が高く、DD型はその逆なので、レジスタンストレーニングに対する耐性だけでは、速筋体質か遅筋体質か判断できないという基礎的回答が前回の話でした。

今回は質問に関係ない完全な余談編です。



学生時代、特に持久系競技を行っているわけではないのに、凄いスタミナを持った学友が皆さんにもいたはずです。

そのような人はアデジオテンシン変換酵素(ACE)の働きが弱く、運動中における血流量と酸素供給量が滞りにくい全身持久力に優れたACE遺伝子がII型である可能性があります。

軍隊での新兵を対象にした実験では、10週間の基本訓練によって、IIタイプの人は15kgのバーベルを持ち上げる反復回数が劇的に向上したそうです。なんと、その向上率は血管が収縮しやすいDDタイプの11倍。

同じ体育や部活の体力向上訓練でも、ほうほうの体で着いていくのがやっとの人のと涼しげな顔でクリアする人がいるのは、この遺伝子が影響を及ぼしているかも知れません。



〜スーパーマンの弱点〜

誰もがうらやむ無敵のスーパーマンのように見えるIIタイプの人ですが、実は意外な弱点を持ちます。

健康な若者を対象にした9週間の筋力強化トレーニングにおいては、II型の人は筋力増加度が最低を示したそうです。つまり、IIタイプの人は筋力トレーニングの効果が出にくいということになります。

これはトレーニング耐性が強く、筋内環境が悪化しにくいという「長所」を持つがゆえに、筋肉をいじめ抜いて痛めつけるという筋力トレーニングが効きにくいという要因が強いのかも知れません。このタイプの人は「ダメージを受けにくい身体に効率よくダメージを与える工夫」や「超ボリューム法(高強度大容量法)の採用」など、筋力アップの為には試行錯誤が必要なようです。



また、70歳から79歳までの約1000人を対象にどれだけ運動しているかと身体の動きが不自由になったかを3年間に及んで調査した研究では、運動を継続しているII型の人は他のタイプの人達に比べ、身体が不自由になる率が45%も高かったそうです。

この現象に関するメカニズムはわかっていませんが、個人的にはII型の人は筋肉がエネルギーを効率よく消費してくれること、そして、持久力が高いということはその分だけミトコンドリアがATPを作り出していることに他ならず、結果的に活性酸素の生涯生産量が多くなる為ではないかと考えます。

健康年齢の延長やクオリティ・オブ・ライフ、抗年齢視点から考えると、あまりに活発かつ長時間の活動は好ましくなく、体質的には若干燃料食いな体質であることが望ましいのではないかと思われます。

そして、この二点は遺伝子の影響よりも、生活習慣や運動習慣と言った自己でコントロール可能な要因からの影響が大きいことがポイントとなります。



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