誰もが陥るプロテイン性能のミスリード #3

Q:ホエイ、カゼイン、ソイ(大豆)、エッグ、ブレンド等、様々なプロテインがありますが、どれが一番良いでしょうか?

Q:プロテインの中で筋合成刺激が最も高いと言われるホエイが、やはりベストでしょうか?



「カゼインに対する勘違い」

カゼインは、胃でジェル状に変化することで、腸内をゆっくりと通過する。急激に血中アミノ酸濃度を高めて筋合成を刺激する作用はないが、長時間にわたって少しずつ血中にアミノ酸を供給するので、血中アミノ酸レベル低下や低血糖によって誘発される忌むべき筋分解を抑制する効果が高いと信じられている。

筋合成刺激よりも筋分解対策に日夜腐心する方がコンスタントな筋量に有益である事は、今日では常識である。同量のホエイ摂取グループと同量のカゼイン摂取グループを比較した結果、筋量増加においてカゼイン摂取グループに軍配が挙がったと言う実験はあまりに有名ではあるが、その実験結果の意味する所が「カゼインがホエイよりも優れている」ではなく、「筋肉の分解を抑制する方が筋合成刺激よりも大切である」と理解が及んでいる人が多勢を占めているはずだ。

上記の性質を利用して、「就寝前はカゼインプロテインを摂取しておけば、就寝中の筋分解を防ぐことができる」、カゼインと素材が異なるプロテインを併用することで、合理的なタンパク質補給ができる」と考える人は多いはずだ。確かに実験結果に基づけば、ロジカルな結論になるが、よく考えると些か平面的思考と言えるだろう。



カゼインと腸管
カゼインは腸管をゆっくりと通過し、7〜8時間にわたってアミノ酸を供給すると言われているが、日本人の多くは欧米人に比べ腸管の長さが2〜3mも長いと言う事を忘れてはならない。メーカーやエキスパートが推奨するマニュアルに従って就寝前にカゼインを採用したら、便がベトベトになって不快になったという人も多い。

前回の「エビデン信者の盲点」を思い出して欲しい。例え海外の実験で良い結果が得られていても、ゲル状の乳由来物質が遺伝的には乳製品非対応の日本人の長大な腸管を長い時間をかけて通過すれば、人によっては不快な症状が現れても不思議ではない。マニュアルやエキスパートがベストと決めた手法も、身体はNoと手を挙げる場合がある訳だ。



再掲:ホエイ VS カゼイン
同量のカゼイン摂取グループと、同量のホエイを小分け(確か20分おきだっけ?)に摂取したグループの比較では、ごく少量のホエイをペチペチ摂取したグループに筋量増加において軍配が挙がった実験結果からも、血中アミノ酸濃度を保つことで筋分解を抑制する方法が優れている事がわかった。

上の結果は、

・筋分解抑制に対してアミノ酸の持続的補給が重要
・その際にアミノ酸プロフィールが優れている方が良い
(この実験の場合、ロイシン等のBCAA含有量が高いホエイの方がアミノ酸比率が優れていた)

を示す。

これらを元に考えると、日中はEAAやBCAAを溶かした水などを飲料水として小まめに補給し、就寝前はゆっくりと消化吸収されるように加工されたタイムリリースホエイを採用するのが、筋分解を抑えながら筋合成を刺激し得る現実的な方法となるだろう。

#4へ続く



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