Q:アームレスリングに取り組んでいます。補強として行うウエイトトレーニングにおいて、古株先輩Aはアームレスリングになぞらえてワンハンド種目に強いこだわりを持っています。一方、古株先輩Bはツーハンド種目の方が重たい重量が扱えるので有効だとして譲りません。また、古株先輩Cにいたっては下半身の力こそが最も重要と、ウエイトトレーニングは下半身のみです。そして、いずれの先輩もそれぞれの階級の地方チャンピオンなので、どれが正しいのか混乱してしまいます。

腕諸々編-Part.1-後編
「ツーアームか、ワンハンドか、それとも下半身か?」


・ワンハンドの腕トレ重視の競技特性に近い補強

・仕事量と刺激を重視した純粋な補強としてツーハンド種目中心

・地力と力の起点を強化する総合的長期的な視点からの補強としての下半身トレ

どれも理に適っている上に、それぞれの実践者が結果を出しているため、どれを選べば良いか、はたまた全部採り入れるべきか、迷ってしまうのは致し方ありません。



そんな時に思い出すのが、元ボディビル日本チャンピオンがセミナーで語っていたメダパニ話です。

「筋肉は食べ合うんです。例えば、その年、背中が発達すると胸が食われてしまうんです」

ホンマかいな?と誰もが最初はそう思うでしょうが、きっとこういうことが言いたかったのだと思います。

「栄養や回復、トレーニング時間、体力には限りがあるため、ある部位や弱点を際立たせて発達させようと思ったら、他の部位への投資は自然と減少するため、ある部位の大幅な改善と引き替えに停滞または退化する部位が出てくる可能性がある。全部同時に著しく発達させるのは極めて困難であり、弱点を大幅に改善したければ、それ一点に集中しなければならない」

こう考えれば、一見、メダパニ話のように思えて、実は真理を突いた意見である事が解ります。




上の話と同様に、全部同時にいいとこ取りというのは不可能に近いので、もしも、先輩方のトレーニングを全て採り入れたい場合は、トレーニングプログラムに一工夫する必要があります。その方法の一つとして、ピリオダイゼーション的なトレーニングサイクルを組むことです。

1、
オフシーズンの初めは、地力と初動、そして力の源を司る下半身のトレーニングだけを集中して行います。もしくは、パワーの3種目のみを行い、いずれにしても、腕などの小筋群のトレーニングは完全なオフにします。そうすることで、容易に発達させるのが難しい下半身が改善されやすくなります。また、腕トレを完全オフにすることで、騙し騙し持たせていた怪我の本格的な回復が望め、一石二鳥です。

2、
オフシーズンの中盤からは、上半身の筋量と筋力を高める為に、重たい重量が扱えるツーハンド種目を中心としたトレーニングを行います。片手の2倍強の重量が扱えるので、その分、強い刺激を筋肉のみならず、骨や関節に刻むことができます。下半身のトレーニングは、完全オフではなく、比重や頻度を下げて継続するのが理想的です。

3、
オフシーズン終盤となれば、実戦に近いトレーニングとして、ワンハンドの高強度種目を中心に行います。やはり、他の方法は、完全オフではなく、比重や頻度を下げて継続するのが良いでしょう。




アーム初心者で下半身のトレーニングをあまり行ったことがない人は、特に1が不安だと思います。腕を全く刺激しなくて大丈夫だろうかと。ですが、全く心配ありません。腕を含めた上半身完全オフのスクワットオンリーで、腕が発達したという有名な実験があるくらいです。

と言う訳で、先輩方のアドバイスがそれぞれに違った方向を向いていても、全て完全に正しい場合があり、さりとて、全てを同時に実戦することはできない時は、ピリオダイゼーション的に時期をずらしてサイクルすることで、いいとこ取りで解決することができる場合があります。

#10へ続く



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