誰もが陥るプロテイン性能のミスリード #1

Q:ホエイ、カゼイン、ソイ(大豆)、エッグ、ブレンド等、様々なプロテインがありますが、どれが一番良いでしょうか?

Q:プロテインの中で筋合成刺激が最も高いと言われるホエイが、やはりベストでしょうか?


これらの疑問が発生するのは、第一にプロテインの主流を占めるホエイやカゼインに対して字面のみしか理解していない為かも知れない。

そこで、これらの素材に対する一般的理解から一歩引いた俯瞰と解像度を高めた視点から、それぞれの特性を考えてみたい。


「ホエイに対する勘違い」

1、ホエイは筋合成を高める

確かにホエイプロテインは筋合成刺激作用が強いタンパク源である。その理由として、ロイシンを中心とするアミノ酸を多く含むこと、そして、消化吸収が早い為に、「比較的」素早く血中アミノ酸濃度が高まるという特徴によるものと考えられる。

この点において、他のプロテイン類に対するアドバンテージは揺るぎないが、例の古典を思い出して欲しい。筋肉量の増大に最も効果が高いと思われる方法は、血中アミノ酸濃度を保って筋分解を抑制することである。

また、プロテインの中で筋合成刺激が強くとも、今やロイシンなどの直接筋合成を高める強いシグナルを持った遊離アミノ酸やその派生品が利用できることも忘れてはならない。

つまり、「筋合成を高める=筋力や筋量が増える」と言う訳ではなく、「筋合成刺激はホエイがNo.1」という訳でもない。



2、ホエイは吸収速度が速い

1の点を良く理解している者は、「要はホエイの特徴と弱点を把握して、プロテインを使い分けすれば良い」と判断するだろう。タイミング、使い途を誤らなければ良いと。

では、その吸収の速さと筋合成刺激が必要なタイミングとはいつだろうか?

その一つがトレーニング前後である。トレーニング前後に特定の栄養素を摂取して、素早く血中アミノ酸濃度を高めて筋合成を促す行為は、この10年で半ば常識となった栄養摂取テクニックだ。このタイミングでのホエイ選択は間違いではない。

しかし、より吸収速度が速く、極めて短時間で血中アミノ酸濃度を高め、他の追随を許さないほどに筋合成を刺激する素材が存在することも同様に常識化しているはずだ。

それが、EAAやBCAAを始めとするロイシンを中心とした遊離必須アミノ酸群である。

これら遊離必須アミノ酸は、筋合成を促進しつつ、筋分解を抑制する効果が極めて高く、その上、どのタンパク源よりも吸収が早い。つまり、筋分解が昂進して、筋合成が低下するトレーニング直後のカタボリックな体内環境を筋合成が優位となるアナボリックな状態へと一変させたい場合、最も適する素材は遊離必須アミノ酸なのだ。

そして、緊急性が比較的低い他の摂取タイミングにおいて、必ずしも吸収速度が重要になるとは限らない。



3、ホエイは消化が良い

これも正しい。ホエイは他のプロテインよりも比較的消化速度が速く、それ故に正味体内利用率が高いと信じられている。

ただし、消化吸収が良いと言われると、あたかも身体に良い、健康的と我々はついつい勘違いしてしまうが、食品に対する反応は個人個人異なり、平均値から語られる概論とはほど遠いケースが見られることを思い出して欲しい。

例えば、乳糖不耐性の人が牛乳や乳糖を含んだホエイを多く摂取した場合、お腹が緩くなることが多い。また、乳糖ではなくホエイそのものに対して、アレルギーを持つ人も存在する。あるいは、体内通過速度の速さから、長年の愛用にもかかわらず少しも身に付いた気がしない人もいることだろう。

また、同じホエイ類に属するホエイペプチドの方が遥かに消化吸収性が高いことも覚えておいて損はない。



まとめ
それではホエイは利用価値が無いのかと言うと、それは全く異なる。一歩引いて観察すると、ほとんどの面でNo.1の座を他の素材に譲ることになるが、味に関してはその右に出る物は存在しない。

そして、先のイントロダクションで述べたこのシリーズのオチをもう一度反芻して頂きたい。

「自分が最も美味しいと思うタンパク源」、「自分の体質に適合したタンパク源」を選ぶと言う自分を基点とした判断基準で、素材を選ぶべきなのである。

「自分にマッチ」するとは、実践栄養学にはピッタリの言葉で、体質的適合や味覚的適合は勿論、コスト的にも自分に適合した物を選べば良いのである。ホエイは比較的安価で汎用性が高いため、ホエイが自分にマッチするのであれば、自信をもって味わえば良いのだ。

#2へ続く



【関連】
誰もが陥るプロテイン性能のミスリード-イントロダクション
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