Q:古株先輩Aは、トレーニングの最初にいつも傾斜をマキシマムにした腹筋台でシットアップを行っています。ある時、僕も真似して採り入れてみようと遠目に観察していると、古株先輩Bが近寄ってきて耳打ちしてきました。「あんなに傾斜を付けていたら、全然腹筋に効かないから何の意味もないぜ?腹筋に効かせるには腹筋台は傾斜を付けず、可動域が小さくなってもいいから、丁寧に行うんだ!」・・・と、どちらの先輩の腹筋も立派に発達しているので、混乱してしまいます。

腹筋編-Part.1-前編
「急な傾斜を付けた腹筋台」


毎度ながらA先輩もB先輩も正しいと言う話になりますが、この場合は目的によるところが大きいと言う一例です。

ジムでは腹筋台の角度を最大にして行っている人を沢山見かけ、全然身体ができあがっていない人に限って、角度を付けたがる傾向があるように見えるので、B先輩の言っていることが正しく聞こえてしまいます。

確かに腹筋台の角度を付ければ付けるほど、腹直筋の導引率は下がり、その代わりに他の筋肉への負荷が増えてきます。その一点だけから観れば、角度を付け過ぎた腹筋台でのシットアップは意味がないと切って捨てる事ができますが、腹筋の代わりに導引される筋肉に着目すると、修行風腹筋にも価値が見いだせます。



腹筋台の角度を付ければ付けるほど腹筋の代わりに負担が増えてくる筋肉とは、何を隠そう腸腰筋だったのです。

多くの競技者が先天的に腸腰筋の筋量に乏しく、それ故の瞬発力や爆発力の伸び悩みを抱えることしばしばで、同様に一般の日常生活においても、その衰えは腰痛などの様々な不具合の原因となります。つまり、腸腰筋とは日本人にとって自ら進んで鍛え続けたい筋肉の一つなのです

そして、それのみを集中的に鍛えるアイソレート種目やマシンは存在しない為、腸腰筋使用率の高い種目が身近で行えるのであれば、行うべです。



急傾斜腹筋台によるシットアップのメリットは他にもあります。

ダイナミックな動きで行えば、スポーツパフォーマンス向上が期待できる腹を中心とした連動性のあるトレーニングになります。現実的には腹を介してエネルギーを伝達するような大きなモーションはありますが、腹筋のみを僅かな可動域でピクピクと動かすような動作は、存在しません。現実的な動きから考えると、ダイナミックな腹筋運動は採り入れてみる価値が充分にあります。

また、急傾斜腹筋をコントロールされた動きで、ゆっくりと行うのも悪くありません。動作のコントロールや重心のコントロールが無意識に強化できることでしょう。もちろん、この場合は腹筋の導引率も高くなります。

そして、このような可動域の大きな種目をトレーニングの一番初めにもってくるメニュー構成の採用は、ウォームアップ代わりになるため、時短トレーニングにも一役買います



と言う事で、腹筋を鍛えるついでに、腸腰筋や連動性も同時に鍛えてしまいたい場合は、大げさに傾斜を付けた修行的シットアップも全然OKなのです。しかも、ウォームアップを兼ねて、一石二鳥以上の成果が得られることでしょう。

後編へ続く



【関連】
マスターと考える体幹のトレーニング-まとめ
古株先輩達のメダパニ!大胸筋編-Part.1-前編
古株先輩達のメダパニ!大胸筋編-Part.1-後編
古株先輩達のメダパニ!大胸筋編-Part.1-番外編
古株先輩達のメダパニ!三角筋編-Part.1-強度設定〜過去ログ参照編〜
古株先輩達のメダパニ!大胸筋編-Part.2-ダンベルプレス〜過去ログ参照編〜
古株先輩達のメダパニ!腹筋編-Part.1-前編
古株先輩達のメダパニ!腹筋編-Part.1-後編
古株先輩達のメダパニ!腕諸々編-Part.1-前編

メダパニ先輩とマキシム兄貴-まとめ

えせトレ-まとめ Part.1
えせトレ-まとめ Part.2
えせトレ-まとめ Part.3
えせトレ-まとめ 番外編