「あなた自身がサラ・コナーになって下さい。僕もそうします」という話

「ターミネータは、『2』までがターミネーターで他は別物!」と捉えている方は多いと思います。

僕もその口ですが、「2」の数年後を描いたテレビドラマシリーズ「サラコナークロニクルズ」は、正統派の仲間に入れても良いくらいの名作です。


このドラマ版を観れば尚のことですが、そこに至るまでもなく、映画の「2」までを何度も見たことがある人は、ある事に気がつきます。

この物語の真の主役がサラ・コナ−である事は言うに及ばず、本当の救世主はジョン・コナ−ではなく、サラ・コナ−その人であったと言うことです。



人類を救う抵抗軍を組織するほどにジョンが成長したのは、サラがまだ見ぬ段階から息子の力を信じて、周到な準備と徹底した訓練を息子ジョンに用意した結果なのです。

コンピューターに征服されてしまう未来、自分の息子がレジスタンスのリーダーになると言う未来、そして、その息子が必ずや人類の敵を打ち負かすと言う未来を信じ、「狂」の段階までその信念を高めたからです。

つまり、サラが存在し、彼女が狂ったほどの信念を持ち、狂気を行動に転換したからこそ、世界は救われたと言っても過言ではないでしょう。



その事実に気がつくと、また、あることを発見します。

ターミネーター第1作目では、多くのサラ・コナーが存在し、その中からカイル・リースは目的のサラを探し出さないといけませんでした。

ひょっとしたら、カイルは未来のジョンが指定したサラではなく、人違いでサラを選んでいたかも知れない。本当のサラは別にいたけど、間違ってリンダ・ハミルトンのサラ・コナーのもとに来訪してしまったのかも知れない。

どうでしょう?
仮定の話であっても、答えは明白です。

例え本物のサラでなくても、あのサラであれば・・・、あのサラが信じ込んで行動を起こせば、その息子はやはり救世主となったことでしょう。



例え未来が予測できようとも、運命が決まっていようとも、それすらを変えることができるのです。

それこそが、計算で予測できる「単なる化学反応と電位差によって生じる想定可能な心や意識」を遥かに超えた狂ったほどの信念に基づいた強烈な意志と行動力です。

極まった信念によって生み出された猛烈な熱量を持つ意志の力は、定められた鉄のレールをゆがめ、たわませ、溶かすことで、自身の軌道を変えることができます。

意志の力こそ未来を確定させないカオスの一部かも知れず、尚且つ、その不規則性の中にベクトル(方向性、統一性)を発生させる根源なのではないでしょうか。



ターミネーターは、運命が決まっていても、狂うほどの信念を精錬した意志の力で、それを変えることができることを教えてくれました。不可避の事象であっても、強烈な意志は、その事象の遅延や軌道変更を可能にするでしょう。

運命という言葉を否定するのは簡単ですが、同時に誰もが運命に抗うことができるのです。

つまり、誰もがサラ・コナーになれると言うことで、誰もが未来を変えることができる可能性を持つのです。


この話を今年の3月11日の言葉代わりにしたいと思います。

私もターミネーターで考えたPart.2へ続く



【関連】
私もターミネーターで考えた-前編
私もターミネーターで考えた-後編
私もターミネーターで考えた-Part.2

意志の力が脳を変える-前編
意志の力が脳を変える-後編
意識や意志はどこから来るのか? 前編
意識や意志はどこから来るのか? 後編