真面目編
ある時、数週間ぶりにトレーニングへ向かった。

チンニングを終え、ベントオーバーロウの出番が来た。

かなり久々だったので腰への影響とチンニングでの感触を総合して、重量を慎重に設定した。

120kg(+カラーが5kg)と前傾を浅くしたベントローにしては控えめな重量だ。久しぶりであっても、気持ちよくトレーニングできるだろう。

シャフトを握ってラックアップ。
ズズズッと地面に引きずり込まれそうな重さに、ウエイトトレーニングってこんなにしんどかったけ?と驚く。

いや、休みすぎて衰えすぎたのか?
そんなはずはない。コロンブ、窓の外から変なイタリア人がこっちを見て笑っているぞ!



思い切ってウエイトを引いた。

ジムのざわめき、有線の音、ウエイトの接触音・・・全ての音が消えた。ジムでは自分一人しか存在せず、その世界には音がなかった。キーン。いや、自分の体内の音だけは聞こえた。

憤怒の表情を能面に隠して、4レップほど絞り出した。



やっぱり、サボり過ぎてはいかんなぁと、次セットの為にウエイトを落とすべく、バーベルを振り返り、プレートに触れる。プレートの解体にかかりつつ、次の重量を計算する時にようやく気付いた。

それは、120kgではなく140kg(+5kgの留め具)にセットされていたのだ。

誰でも当てはまる訳ではないが、表層意識的にも潜在意識的にも、あれこれ理由をつけて強度を落とす傾向があるかも知れない。そして、表層意識や潜在意識に縛られて、本来の力を眠らせていることが多いのではないだろうか?

#2へ続く



【関連】
トレーニングで良くある話 #1
トレーニングで良くある話 #2

【Ex】
空手家松岡先生の場合
ストリクト症候群、ストリクトシンドローム
おもこ