第二夜
「赤いプレリュード」


小野市のとある公園の側には、30分くらいで1周することができるトレッキングコースがある。眺めや難所などの面白味がある訳ではないが、そのコースにはある一つの特徴があった。

マウンテンバイカーとトレッカーが共存していたのだ。

もちろん、それはMTB側の一方的な思い上がりに過ぎないが兎も角、トレッキングするには面白味に欠ける反面、MTBにとっては難所が多い上に1周数分でタイムアタックできるそのコースは、MTBトレーニングに人気が高かった。


当時、MTBの大会に出場していた友人達と現地集合で毎週のように練習したものだ。

練習後は、昼食代わりにコッヘルとシングルバーナーで、ラーメンを作って食べた。ラーメンを食べながら、友人達と切り株に座って話し込んだ。

我々が話をしている切り株の腰掛けからは、公園の駐車場が視界に入る。そして、毎週、あるいは毎日のように赤いプレリュードが停まっていた。どうやら、女の人が乗っているようだ。



練習?あるいは集っての運動後のラーメントークは飽きずに続いた。

半年か1年くらい続いただろうか。その間もプレリュードは、定位置に駐車されていた。

ある時、山から降りてくると、公園に似つかわしくない大きめのトラックが停車していた。

その日は、午後からの練習で、ラーメンを食べ終わったにもかかわらず、長い間喋っていたので、いつの間にか日が落ちてしまった。

辺りがスッカリ暗くなった頃、赤いプレリュードの脇に黒い車が横付けされた。



黒の車の助手席から降りた女の人は、自身の車、プレリュードに乗り込もうとした。

その刹那だった。

トラックの運転席が開いたと思うや大声で叫ぶ男が飛び出し、女を捕まえて引き摺り回した。薄闇の中、濃霧のような砂埃が駐車場を包んだ。

これが修羅場というヤツか。



20代前半の我々には、理解しがたい世界だったので、赤のプレリュードは公園で待ち合わせして、普通にデートしているのだと思っていたのだ。現実は、浮気相手との待ち合わせに人里離れたカントリーな公園の駐車場を利用していたようだ。

それ以来、見えるようになってしまった。

平和な公園やスーパーの駐車場の片隅に駐車されている車の真意が・・・。


この話の副読本(補習授業)へ続く

第三夜へ続く



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