トレーニング編-4
「自分にとって最適な反復回数を見つける」-補講2


一口に「トレーニング効果が出やすい体質」と言っても様々で、ある面において有利であっても、他方では不利になる場合がある。

例えば

・PPARGC1A遺伝子(ミトコンドリア増殖活性≓持久系運動のトレーニング効率)タイプ:G/G

・ACE遺伝子(血管収縮≓酸素供給能力)タイプ:I/I

・ACTN3遺伝子(速筋と遅筋の割合):X/X型

のいずれかに当てはまる場合、持久系トレーニングに対する反応が高く、伸び率が高いことが予想される。つまり、「トレーニング効果が出やすい」となる。



PPARGC1A遺伝子はミトコンドリア増殖能力に関わる遺伝子で、G/G型はミトコンドリア増殖活性が高く、運動を継続することでエネルギー生産(酸素を利用したATP生成)能力を拡大しやすい。

ACE遺伝子は血管収縮酵素に関わる遺伝子で、I/I型は血管拡張能力が高く、安定して筋肉へ酸素を送り続けやすい。酸素を利用したATP生成に優れた遅筋を働かせ続けやすい。

ACTN3遺伝子は速筋代謝に関わる遺伝子で、X/X型は遅筋の比率が高く、筋持久力に優れる。

これらの因子を1つ以上持つ人は筋持久力などを養うトレーニングに対する反応が良好な反面、ウエイトトレーニングなどのレジスタンストレーニングに対しては「トレーニング耐性が高い」という問題が発生する可能性がある。



〜トレーニング耐性?〜

レジスタンストレーニングは筋肉へ負荷をかけて、力学的並びに化学的ダメージを与える事で、筋肉の成長を促すことを目的としている。多くの場合、筋力アップや筋肥大を狙った刺激を筋肉へ与えようとする。

ところが、上で紹介したタイプ、とりわけ、その因子を複数有するタイプの人は反復トレーニングに対する適応が早い為、早々に期待値ほどのダメージを受けにくくなりやすい。

このタイプの人は持久系に関してはトレーニング効果が出やすい体質であるが、レジスタンストレーニングに対しては「トレーニング効果が出にくい体質」と言えるかも知れず、反復行為に対する適応が早いことから「トレーニング耐性が高い」と言う表現を当てはめても良いだろう。

同様に、ACE遺伝子がD/Dタイプの人も、レジスタンストレーニングに関しては「トレーニング耐性が高い」可能性がある。10回×複数セットという標準的負荷では速筋にダメージを与えられない可能性や遅筋の筋肥大を促すに至らない可能性が高い。



〜どんな体質でも筋肥大する!〜

トレーニング歴3年を迎えると、多くの人は筋肥大の伸び率が激減し、長い停滞期に陥る。体質によっては1年で頭打ちになる人もいるだろう。

胃腸の強さ消化吸収能力の改善、mTOR経路活性については無視すると、筋肥大や筋力アップを阻んでいるのは速筋や遅筋云々ではない。つまり、遅筋の比率が高い体質だから、筋肥大や筋力アップが起こらないのではない。そもそも、遅筋も肥大することを忘れてはならない。

栄養や消化能力以外の筋肥大を阻む要因として考えられるのは適応能力の高さ、つまり、トレーニング耐性の高さである。

持久力適応が早い体質は遅筋の比率に関係なく、遅筋の動員効率が高く、肥大しやすい速筋の利用率が低い。遅筋が優位であっても、酸素供給量やATP生成に優れると、遅筋が悲鳴をあげるほど酷使されないため、結果的に遅筋の肥大が起こりにくいと言ったジレンマを抱える。

この問題に対しては「待機状態の速筋」を動員するテクニックなどを存分に活用しつつ、トレーニング耐性が付かないような変化に富んだプログラムを課す必要がある。そして、筋肥大や筋力アップが起こりやすい自分なりの反復回数を見つける(編み出す)ことが重要となる。

もちろん、速筋が優位となるACE遺伝子D/Dタイプの人も、最適反復回数の「見極め」が必要だ。

詰まるところ、中級者以上における筋肥大や筋力アップの要は体質に則した反復回数の見極めと「耐性」回避の為のプログラミングとなる。停滞しているのは才能のせいではなく、自分に対する研究と探求不足と言っても過言ではないだろう。

なるべく早い段階で自分の軸を見つけ出して頂きたい。当然ながら、消化吸収能力の改善に努め、摂取栄養素の同化を目指しつつ、mTOR経路活性をお忘れなく。



【Ex】
栄養摂取テクニックからの筋肉増強アプローチ

長編シリーズ「己を知れ!

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