トレーニング編-4
「自分にとって最適な反復回数を見つける」-後編


前回は血管収縮と酸素供給能力に関わるACE遺伝子がD/Dタイプやそう思われる人は反復回数よりも、使用重量を重視した方が良いだろうという話だった。

軍隊で新兵を対象にした実験では、I/Dタイプは筋力の伸びが一番高いことが解った。D/Dタイプでないのは実験故に同じプログラムで行った影響が大きいと思われる。

ともあれ、ACE遺伝子がI/Dタイプの人はウエイトトレーニングに関しては10回×5セットでドラクエ的に「ガンガンいこうぜ!」を選択すれば、サクサクとレベルが上がる人が多いと思われる。つまり、あまりトレーニングについて悩む必要がない可能性が大きく、このような人がアドバイス好きなメダパニ先輩になってしまうと厄介である。

と言うわけで、思考を巡らせる本命はI/Iタイプとなる。



実験によればACE遺伝子がI/Iタイプの人は15kgのバーベルを上げ下げする反復回数が劇的に向上した反面、筋力の伸びは3タイプの中で最低を示した。

I/I型は血管が無闇に収縮し難く拡張性が高いという特性から筋肉へ安定した酸素供給が可能となり、高い持久力を持つ。ミトコンドリア分布の都合上、酸素を使ったATP生成に優れるのは遅筋である為、この酸素供給能力に特化した人は遅筋線維を利用して破格の持久力を叩き出していると考えられる。

このタイプの人はウエイトトレーニングにおいて、強い血管収縮が苦手な為、重たいウエイトを挙げるのが「比較的」苦手となる。恐らく今現在扱っているメインのウエイトを少しでも重くした途端、ほとんど回数をこなすのが難しくなるかも知れない。

昔のアドバイスに従えば、遅筋線維も肥大するので、ウエイトが軽くなっても良いのでしっかりと追い込めば良いとなる。

しかし、筋肥大のシグナルの一つは筋内環境の悪化であり、乳酸の蓄積や酸素の低下が重要な因子となるが、このタイプの人は筋内環境が悪化しにくいというジレンマを持つ。



動員率が少ない速筋線維を働かせる為に、回数はこなせなくても、敢えて自分なりの高回数に挑戦すべきという考えもある。これに関しては間違いではないので、サイクルを組んで、低回数のトレーニング期を設定するのが良いだろう。

実の所、このタイプの人に最も効果的な方法を考えるにあたり、上の「速筋線維の動員」が良いヒントになる。基本的に遅筋線維活用能力が高すぎることが、「見た目の筋肥大」にとって不利なのだ。見た目の筋肥大だけが目的ならば、遅筋線維活用能力を低下させるようなトレーニング方法を考えれば良い。

どんな人でも、どんな負荷でも、速筋線維を動員せざるを得ない状況が存在する。

加圧トレーニング

スロートレーニング

低負荷大容量法

高強度荷大容量法

大容量法と上の良いとこどり

・低温環境



これらの手法は待機状態の速筋を導入せざるを得ない筋内環境となる為、遅筋線維が優位な人であっても、速筋を集中的に刺激できるのだ。

自分が持てる環境、自分を取り巻く環境を鑑みて、上の手法を選択、あるいは自分なりにミックスして、自分にピッタリのトレーニング方法を編み出すしかない。

ACE遺伝子I/I型がジムに入会してトレーナーの言われるままに、10回×5セット教に入信しても、筋肉質なルックスへ筋肥大できる確率は押し並べて低いのだから。

#7の補講編へ続く



【Ex】
長編シリーズ「己を知れ!

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