漁師における死因のTOPは何か?

当たり前であるが、鮫ではない。
ジェフリー漁船からの転落や網の巻き取り機などの機械への巻き込まれなどによる事故が多そうに思える。

ところが、そのイメージを覆し、癌が他を圧倒して死因の40%以上を占め、一位を独占している。実に一般人の約1.5倍である。



これだけ聞けば、「え!?魚介類って身体に良いって言われてなかった?」、「食べ過ぎると癌になりやすいの?」と思ってしまうかも知れない。

しかし、それは早計で、ほんの少し細かく見ると、その癌死の中でも漁師の場合は肺がんが多い。皮膚癌ではないだけでなく、それはどちらかと言えば下位になる。

「ああ、喫煙率が高いから、そうなんだー」と、なるかも知れないが、これも正しい読みではないだろう。喫煙率と肺がんのグラフは、今や全く相関を示しておらず、同じ図面に示した場合、バッテンを描くように交わるくらい、片方は右下がりで、方や右上がりの線を描く。

特に近年では、喫煙者が減るばかりではなく、分煙化が進んで受動喫煙も大幅に減っているにも関わらず、肺がんが極端に増えているのを喫煙のせいにするには些か無理が生じる。タバコは肺がんの原因物質「主席」のスケープゴートである事は、想像するに容易い。



しかしながら、ごく最近判ってきたのは、中皮腫をもたらすアスベストは、その構造自体が他の良からぬ物質を捕獲することで、細胞のがん化に一役買っていると言うのだ。アスベストそのものが細胞をがん化させるのか、アスベスト自身に取り込んだ物質が癌を発生させるのか、その複合なのかは解らないが、兎も角、単純なメカニズムではない訳だ。

同様にタバコもそれ自体に発がん性物質を含むが、実の所、喫煙によって肺に良からぬ物質が吸着し、固着することが、主犯ではないだろうかという研究結果が出ている。タールなどが二重螺旋を一刀両断する物質を1箇所に保持し続ける事で、細胞ががん化するのかも知れない。

これらの事から考えると、漁師の肺がん率の高さは、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる各種の良からぬ物質、特にPM2.5と比べものにならない小ささの浮遊粒子状物質の肺への沈着が主な原因ではないかと推測できる。もちろん、それらは肺に沈着されやすいので喫煙に関係なく肺へ吸着されるが、喫煙者であればより容易に、より長く体内に留まるのだろう。




さて、上はただの推察に過ぎない。ここで言いたかったのは、ほんの少し細かく見るだけで、物事の原因や因果について考察することが可能であると言う事だ。

何にしても、皮膚癌を抑えて、肺、胃、肝臓、その他臓器が上位を占める点は色々と考えを巡らせる価値があるだろう。

我々の身の回りには、身体に悪い物ばかりが溢れていて、それらを複合的に受け容れているため、誰もが癌や心疾患、脳疾患にかかっても、仕方の無いことと諦めてしまうかも知れない。しかしながら、常にメカニズムや因果に考えを巡らせることで、真なる悪玉要因を避けることができるだろう。

#5へ続く



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